飢餓問題に資する食糧廃棄権取引に関する提言(2014)

要旨
   飢餓状態の人々の多くが、発展途上国に住んでいる人々である。その一方で、食料廃棄の問題が深刻化している。先進国では流通段階と消費段階での食品ロスが多いが、途上国では消費段階での食品ロスはほとんど無いが、流通段階では先進国と同水準の食品ロスが生まれている。それは、途上国で生産技術や加工技術が不足していることに起因する。本論文では、食料廃棄の問題を解決するために、温室効果ガス削減を目的とした排出権取引を援用した「食糧廃棄権取引」を提案する。廃棄権取引は、参加先進国に食料廃棄削減目標を設定し、目標を下回る削減分を廃棄枠として取引できる基本スキームを有する。削減目標は国内の食品企業に案分される。企業は、目標達成のために食品廃棄の削減努力が求められるが、削減目標の不足分については廃棄権で補填することもできる。廃棄権は、途上国の流通ロスの削減を目標とするプロジェクトを実現するか、余剰廃棄権に基づく廃棄権引換券を消費者から獲得する2つの方法で獲得できる。廃棄権取引のスキームが実現すれば、食糧問題に対する意識向上を図りつつ、先進国と発展途上国の両方の食品ロスを削減することができ、その結果として飢餓人口を減らすことが可能となろう。